真空管アンプに段間トランス(interstage input transformer=略してIST)を使用される方は、現在そう多くはありません。
プッシュプルアンプの位相反転段に使用することは更に少なくなっています。
そこで、二つのテーマに絞って思索検討をしてみましょう。
1)段間トランスを使用する目的
シングルアンプとプッシュプルアンプ
2)最高のVINTAGEトランスは?
1)現在パワーアンプにISTを使用しないのは、コストに於いて不利であるため。CR結合に比して情報量が少ないから。ドライバー段をパワードライブで形成出来るからということでしょうか。トランスを用いずチョーク負荷にしたり、グリッドチョークにしてドライバー段と出力管グリッドリーク低減を図っていました。実用上も聴感上も近いものになりました。これはシングルアンプでも位相反転段を必要とするプッシュプルアンプでも同じでしょう。
ところで元々出力管開発時にISTもCRも使用した欧州管は真空度が米国管とは異なります。真空技術が異なるのですが、それは別件にて。その欧州管も生産されて既に90年ほど経ちます。この経年変化をきちんと捉えないとあたら残存した真空管寿命を縮めてしまうことになります。
これをメーカー規格を現在適用することは危険~最低の知識は必要ですと申し上げているのですが。愛好家のMさんから<たぶんほとんどの人はわかっていないと思いますよ。>と言われてしまったのです。トランス入力の良い処は何といっても直流抵抗が低い、出力管のグリッドリークをとらずに、又は低く出来るということでしょう。位相反転も行えるプッシュ用トランスもあります。
2)最高のVINTAGE ISTは?
現行品の評価は皆様にお任せします。VINTAGEでは、WWII以前はドイツのKÖRTING、イギリスのFERRANTIが好きです。フェランティはとても好まれているせいか在庫は無くなりました。ケルティングは知られていませんが、トランス自体が残されていません。
さて二次大戦後シングル・プッシュプルのISTは2種ありました。
騒がれたために知られた UTC LS-40 と従来から知る人ぞ知る TRIAD HS-32 です。
LS-40は少々過大評価ですが、規格を見てみましょう。
1951UTCカタログ 1次15KΩ 2次135KΩ 2巻/ ±1db 30-20Khz/Level +12db/1次許容電流 8ma/シールド -74db
1960UTCカタログ 1次15KΩ 2次135KΩ 2巻/ ±2db 30-18Khz/Level 100MW(12+db)/1次許容電流 8ma/シールド -74db
HS-32
1970TRIADカタログ 1次15KΩ 2次60KΩ 2巻/ ±?db 20-15Khz/Level 1次電圧20V(トランス表示200MW)/1次許容電流 6ma/シールド -45db
HS-32のLevel表示の意味がわかりません。トランス本体表示は200MWです。パワーレベルはLS-40の倍、周波数帯域は低域よりになります。